製品・サービス情報
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Quantum Solutions社製品
量子ドット/ペロブスカイト |
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Quantum Solutions 社(イギリス)は、サウジアラビアのアプドラ王立科学技術大学のスタートアップ企業です。液晶ディスプレイ、発光ダイオード、太陽電池、光検出器用途の量子ドットを開発、販売しています。独自の技術により開発されたペロプスカイト単結晶は、オプトエレクトロニクス用途において注目されています。また、量子ドットの高品質を維持するために、高い品質管理基準及び最新の設備を揃えています。
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アプリケーション
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【光検出器】
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近赤外線センシングは、フォトカメラ(顔認識用)、自律走行車(障害物検知用)、ARおよびVR(視線追跡用)、暗視および監視、生物医学イメージング、品質管理および製品検査などの機器に広く使用されています。新しいセンサー技術は、デジタル変換を可能にし、IoT用のデバイスを統合したり、ビッグデータを収集したりすることができます。InGaAsおよびGeなどの現在の活性NIR吸収体は製造コストが高く(高温エピタキシャル法)、単一デバイス内でSiベースのフォトダイオードと組み合わせることができません。QDotTM PbS QDsはより高い感度、より広い吸収範囲、およびSiベースのセンサーとの適合性を有します。
関連製品:
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NIR(SWIR)センサーにPbS量子ドットを使用する利点:
◆NIR(SWIR)領域で700~2500nmの幅広い調整可能な吸収波長
◆高いデバイスEQEと検出性、低い暗電流による優れた光電特性
◆印刷およびスピンコーティング製造プロセスによるシリコンCMOSとの容易な統合
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PbS量子ドットを使用したフォトダイオード構造
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【センサー性能】
感度範囲 |
300~2500nm(調整可能) |
EQE |
>30~40% |
検出感度 |
最大1x1011cm・Hz1/2/W(Jones) |
暗電流 |
100~1000nA/cm2 |
応答時間 |
<50μs |
ピクセルピッチ |
<2μm |
冷却条件 |
室温またはTEC |
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【デバイス例】
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吸光度1420nmのQDotTM PbS量子ドット(QDotTM PbS-1420-abs)をCMOS ROICチップのアクティブ層として使用して、感度範囲400~1500nm、解像度768~512px、ピッチ5μmpxのNIRカメラを実現しました。
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典型的なEQEは、第一励起子吸収ピークである1420nmにおいて40%以上に達し、検出感度は1x1011Jones、暗電流は100-1000nA/cm2の範囲内でした。
(量子ドットVIS-NIRカメラ)
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1.VIS-NIRカメラへの応用
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現在、産業界や民生機器では、照明の無い環境でも動作するカメラのアプリケーションが増えています。VIS‐NIR(可視~近赤外)またはVIS-SWIR(可視~短波長赤外)イメージャーは、300~2500nmの波長範囲の光に感度を持つ、新しいタイプのセンサーです。300~2500nmの光に感度を持つ新しいタイプのセンサーで、近赤外域(780~2500nm)の光がほとんどない環境でも、対象物の画像を撮影して識別することが可能です。そのため、従来のシリコンカメラ(感度範囲300~1000nm)では対応できない環境でも、非常に有効なセンサーです。
VIS-NIRカメラはここではすべてを紹介することができないほど、多くのアプリケーションで可能性を秘めています。しかし、十分に知られているアプリケーションの中には特筆すべきものがいくつかあります。例えば、自動車の分野では、夜間や霧、豪雨、ミストなどで視界が悪くなったときに、近赤外領域で動作させることで、画面に鮮明な画像を映し出し、安全性を高めることが可能です。また、スマートフォン業界もVIS-NIRカメラの有望なアプリケーションの1つです。低照度撮影の限界を押し上げるだけでなく、暗闇や医療用マスク越しでも生体認証による顔認証が可能になります。最後に低照度下でも動作可能なVIS-NIR
CCTVセキュリティカメラは、夜間にコントラストの高い画像を提供することが可能です。
また、産業界では、品質検査・管理、特に食品加工業での商品の検査・不良品の検出に大きな需要があります。プラスチックの中には近赤外領域で透明になるものがあり、食品加工ラインに設置されたVIS-NIRカメラは、プラスチックパッケージから不良品を検出することが可能です。また、農業・食品業界では、果物の傷の検出にも役立ちます。果物の傷には水分が含まれていますが、この水分は近赤外域の吸収率が高いため、近赤外カメラは傷を黒い点として簡単に検出することが可能です。さらに、食品に含まれる金属や石などの不純物を選別する際にも、このカメラは非常に有効です。例えば、コーヒー豆と小石は可視光の下では同じ様に見えても、近赤外光の下では大きく異なります。(図1)
図1 石が混入したコーヒー豆の写真
(左)は可視カメラで撮影した写真。
(右)は近赤外カメラで撮影した写真で、コーヒー豆(白い斑点)と石(黒い斑点)の違いがはっきりわかります。
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2.現在のVIS-NIRカメラを支える技術
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VIS-NIRカメラの生産を可能にする半導体材料があります。従来のVISレンジカメラは、いずれも300~1000nmの感度を持つシリコンセンサーを使用していました。しかし、1000nmを超えて2500nmまでの近赤外領域を検出するためには、通常ある種のエピタキシャル成長した材料が必要となります(表1)。通常、これらの材料は、高温・真空下での原子層堆積法によって成長させますが、これらの条件が重なるセンサーが非常に高価になります。
検出器の材料 |
標準的なVIS-IR検出範囲 |
Si |
Silicon |
300nm - 1.0μm |
InGaAs |
Indium Gallium Arsenide |
900nm - 1.7μm |
Ge |
Germanium |
800nm - 1.6μm |
PbS |
Lead Sulfide |
1μm - 2.8μm |
PbSe |
Lead Selenide |
1μm - 4.5μm |
InSb |
Indium Antimoride |
2μm - 5μm |
HgCdTe(MCT) |
Mercury Cadmium Telluride |
2μm - 14μm |
表1 一般的な検出器の材料と、VIS-IR波長領域における標準的な検出範囲
現在、InGaAs技術は、近赤外検出用の有用な材量の1つです。その理由は、900~1700nm領域で最高の効率を発揮するためです。1-6x1013Jonesまでの高い特殊検出率D、70%の高いEQE(外部量子効率)、高い応答性を備えています。InGaAsを用いたVIS-NIRカメラはシリコンベースのCMOS読み出し回路とInGaAsフォトセンシティブアレイを組み合わせたハイブリッド構造を採用しています(図2)。InGaAs素子は通常、リン化インジウム(InP)基板上に形成されており、その厚さとインジウム(In)とガリウム(Ga)の比率は、センサーの波長感度に影響を与えます。InGaAsセンサーの各画素は、シリコンCMOSセンサーの画素とはんだパンプ接合で接続されています。
図2 VIS-NIR InGaAsディテクターアレイの構築に使用された主なコンポーネントの模式図
InGaAsアレイとシリコンCMOS読み出し回路の組み合わせは、「フィリップチップ・ハイブリダイゼーション」と呼ばれる比較的複雑で時間のかかるプロセスであり、多くの製造工程を必要とします。まず、InGaAsセンサーとシリコンCMOSセンサーを別々に作ります。次に、両アレイの各画素にはんだパンプを形成します。最後に、フリップチップボンディングで両アレイを結合します(図3)。この様に多段階のプロセスを経ることで生産量が相対的に少なくなり、1個あたりの価格が高くなります。現在のNIRカメラの市場価格は、1万ドルから3マンドルとなっています。
図3 シリコンとInGaAsのハイブリッドVIS-NIRイメージセンサーの統合ルート
この様に高コストであるにも関わらず、InGaAsセンサーは完璧とは言い難いです。現在のところ、読み出し回路と受光部を100%の精度で均一に組み合わせることは技術的には不可能です。そのため、どうしてもかなりの割合で欠陥のある画素が存在しています。
しかも、画素ごとに微妙に異なる挙動を示します。このカメラで作られた生の画像はノイズの様に見えるため、ソフトウェアに欠陥補正のアルゴリズムが必要になります。
さらに、ピクセルサイズが大きいため、解像度が比較的低いという制限もあります。一般的なシリコンCMOSセンサーのピクセルサイズは1μm以下で、カメラの解像度は100メガピクセルを超えますが、ハイブリッドInGaAsカメラのピクセルサイズは約20~50μmで、解像度は200~2500分の1(0.5メガピクセル以下)となります。VIR-NIRカメラの解像度は、InGaAsとシリコンCMOSセンサーの間にCu-Cu接続パンプを使用することで向上させることが可能ですが、5μmのピクセルサイズで134万画素の解像度を実現するためには、光検出器の製造コストが高く、動作する近赤外域の波長が1700nm以下に制限されてしまいます。
もう1つの欠点は、InGaAs技術は室温でのノイズレベルが高く、ダークノイズや温度に依存する信号変動を抑えるためには、熱電冷却や極低温冷却が必要になることです。
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3.量子ドットによるVIS‐NIRカメラの低価格化
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近年の量子ドット技術の開発は、InGaAsやその他のエピタキシャル成長材料に代わる優れた選択肢を提供し、手頃な価格の広帯域かつ高解像度のVIS‐NIRカメラの製造に新たな機械を約束しています。量子ドットは数ナノメートルの小さな半導体ナノ粒子で、優れたフォトルミネッセンスおよびエレクトロルミネッセンス特性をもっています。近赤外センサーでは、量子ドットが光吸収層として機能し、光を電気信号に変換することが可能です(図4)。
図4 量子ドットの光電特性をグラフ化したもの
量子ドットの特長は、シリコンCMOSセンサーの表面上に、簡単な印刷方法で蒸着可能なことです。印刷は、近赤外の活性物質をシリコン基板上に蒸着する、簡単な方法です。エピタキシャル成長させた材料の様に、高温や真空、高価な設備を必要としません(表1)。さらに、印刷はフレキシブルな技術であり、小さなナノドロップレットから大面積まで、あらゆる形状や寸法の材料を高精度で蒸着することが可能です。これにより、250~2500nmの広帯域検出が可能な高解像度の近赤外カメラを、単一の読み出し集積回路(ROIC)でコスト効率よく製造することが可能です(図5)。さらに、ピクセルサイズはシリコンCMOSのピクセルサイズと同じくらい小さくすることが可能です。量子ドット技術を利用することで、近赤外カメラの製造プロセスが非常にシンプルになります。
図5 B\VIS-NIRシリコン/量子ドットイメージセンサーの統合ルート
量子ドットを用いたVIS-NIRカメラの価格は、印刷プロセスが容易であること、シリコンCMOSセンサーの生産スケーラピリティが高いこと、センサー1台あたりに必要な量子ドットの量が少ないことなどから、1台あたり50ドルから100ドル程度になると予想されます。これは、InGaAsやGeベースのセンサーに比べて100分の1の価格です。 |
4.PbS(硫化鉛)量子ドット
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近赤外領域で動作する量子ドットにはいくつかの種類があります。PbS、PbSe、InAs、InSb、HgTeの各量子ドットです(図6)。
図6 エピタキシャル成長した材料とコロイド量子ドット(CQD)材料の吸収範囲
しかし、産業用途の観点からは、吸収係数が高く、光電変換率が高く、空気への耐性が高いPbS量子ドットが最も適切な材料となります。PbS量子ドットは、粒径(2nm~12nm)に応じてバンドギャップを1.5eV~0.5eVに調整することで、様々なサイズのものを合成することが可能です。これらの量子ドットは、800nmから2500nmの範囲の吸収カットオフ検出性をもっています(図7)。これらの特性により、PbS量子ドットは近赤外センサーの製造および加工に適しています。
図7 2~11.5nmの異なるサイズのPbS量子ドットの第1励起子ピークと吸収カットオフの範囲
PbS量子ドットは比較的新しい技術の様に思われるかもしれませんが、信頼性が高く、実行可能なツールであることが証明されています。エピタキシャル成長した形のPbS(バルク、非量子ドット)は、1~3μmの感度範囲内のNIR光検出器の分野で長い間使用されてきたことは注目に値します。例えば、Agilent
Cary5000の様な2500nmまでのNIR範囲を持つ広帯域分光器に広く使用されています。PbS量子ドットについては、2005年に初めて検出器への使用が学術論文で報告されて以来、飛躍的な進歩を遂げてきました。PbS量子ドットはバルクのPbSから進歩したものと考えられており、すべての同じ特長を持ち、さらにバンドギャップの調整、リガンドエンジニアリングによる特性の変化、印刷可能性、シリコンCMOSセンサーとの互換性などの点で追加の利点を持っています。
現在、PbS量子ドットベースの光検出器の応答性(R)と特殊検出性(D)は高く、応答性は103~105 AW-1、特殊検出性Dは、1011~1013Jonesと傑出しています。これらの値は、InGaAsベースの光検出器で得られた値を超えています。InGaAsセンサーと比較して外部量子効率が比較的低く(最大30~50%)、立ち上がり時間が長い(100μs)にもかかわらず、PbS量子ドットイメージャーは、高解像度で手頃な価格のVIS-NIRカメラの分野で有望視されています。
PbS量子ドットのVIS‐NIRカメラはすでに商品化されています。この技術の産業化の先駆者の1つがSWIR Vision System社です。同社は、同じくPbS量子ドット/シリコンCMOS技術をベースにした感度範囲350~2000nmのAcurosカメラを発表しました。解像度は640*512-1920-180(0.33~2.07メガピクセル)、ピクセルサイズは15μmとなります。SWIR
Vision System社は「AcurosTM CQDTM Full HD カメラは、InGaAs VGA カメラと比較して、6倍以上のピクセル解像度を実現しており、微細なディティールを解決する必要のあるユーザーに、より高い視野と優れた鮮明度を提供します」と述べています。
国際的な研究開発機関であるImec社も、PbS量子ドットNIRカメラの開発に取り組んでいる企業の1つです。同社の最新レポートによると、それらのシリコンCMOS/PbS量子ドットカメラはピクセルサイズ1.82μm、潜在的には20メガピクセル以上を達成する可能性があり、記録的な高解像度を達成しました。このカメラの効率は非常に素晴らしく、感度は400~2000nmの間で変化し、外部量子化率は20~60%、特別検出率は1010~1013Jonesとなっています。Imec社とSWIR Vision System 社は、PbS量子ドットとシリコンCMOSセンサーを統合し、手頃な価格の広帯域・高解像度UV-NIRセンサーを実現しました。
PbS量子ドットの高品質と生産の再現性は、感度範囲、EQE、電気的ゲイン、加工性などのカメラパラメータの再現性を保証するものなので、産業用VIS-NIRカメラにとって最も重要な要件の1つです。
量子ドットは、ナノ粒子のコアとドットを取り囲むリガンドからなる複雑な半導体ナノ材料です。ナノ粒子のサイズ分散、表面の科学量論的組成、ファセットと欠陥の状態、リガンドの性質と含有量などの要因がすべてデバイスの性能に影響を与えます。従って、高い光電メリットを得るためには、PbS量子ドットが特定の基準を満たす必要はあります。まず第1に量子ドットは狭いサイズの分散でなければなりません。ディープトラップと同様に、バンドギャップの小さい量子ドットは、光キャリアの取り出しを著しく妨げます。そのため、サイズ分散が20%を超えるPbS量子ドットは光検出器への応用が制限されます。第2に、センサーの効率を制限するトラップ状態を最小限に抑えるために、量子ドットの表面に欠陥がないことが必要です。量子ドットを制御された環境で、厳格な成長および洗浄合成手順に従って合成することが極めて重要です。第3に、適切なリガンドの種類と含有量を選択する必要があります。以上の様に、PbS量子ドットは産業用VIS-NIRカメラに使用するためには、バッチ間の再現性を備えたオプトエレクトロニクス・グレードの高品質である必要があります。
結論として、PbS量子ドットを用いたVIS-NIRカメラは高解像度かつ低価格の可能性を秘めており、品質・検査・管理、セキュリティCCTVカメラ、自動車・携帯電話用カメラなどの分野で、この種の製品の需要は非常に大きいと考えられます。量子ドット技術は、現在のシリコンカメラの感度を限られたVIS領域(300~1000nm)から拡張し、より有利なVIS-NIR領域(300~2500nm)のカメラを実現するのに役立ちます。 |
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