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クリックケミストリーとは/オリゴヌクレオチドのシングルラベリング及びマルチラベリング


クリックケミストリーとは


クリック反応とは、Sharplessらによって提唱された、目的の生成物を高収率で与える比較的簡易的な構造の化合物同士を炭素-ヘテロ原子結合により合成する手法です。2分子間がまるでシートベルトのバックルがカチッ(Click)と音を立ててつながる様に簡単に結合することから、「クリック反応」と呼ばれています。
生命科学の分野においては、この反応機構の中でも代表的な、銅触媒を用いるアジドとアルキンとの環化付加反応(Cu-Catalyzed Azide Alkyne Cycloaddition:CuAAC)を利用した手法が注目されています。簡単な実験操作に加え、アジドやアルキンが生体内には存在しない(bioorthogonal)官能基であり、かつ水中でも問題なく進行し、無数に共存する生体分子があってもほとんど阻害されないため、この手法は生体分子の化学修飾に信頼して用いることができます。
しかしながら、一方で、この反応は銅イオンを用いるため、DNA修飾においてDNAを損傷させてしまうという弱点があります。そこで、tris(benzyltriazolylmethyl)amine(TBTA)などの銅(Ⅰ)触媒を使用することで、CuAAC反応が非常に高い効率でアルキン修飾DNA核酸塩基を官能化するために使用することができることを利用し、baseclick社では製品を開発しています。 
(参考文献)
1. C.W. Tornoe, C. Christensen and M. Meldal, J. Org. Chem. 2002, 67, 3057-3064.
2. Rostovtsev, L. G. Green, V. V. Fokin and K. B. Sharpless, Angew. Chem. 2002, 114, 2708-2711; Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2596-2599.
3. C. J. Burrows and J. G. Muller, Chem. Rev. 1998, 98, 1109-1151.
4. Hilgraf, K. B. Fokin, Org. Lett. 2004, 6, 2853-2855.
5. J. Gierlich, G. A. Burley, P. M. E. Gramlich, D. M. Hammond and T. Carell, Org. Lett. 2006, 8, 3639-3642.
6. F. Seela and V.R. Sirivolu, Chem. Biodiversity 2006, 3, 509-514.
7. P. M. E. Gramlich, S. Warncke, J. Gierlich and T. Carell, Angew. Chem. 2008, 120, 3491-3493; Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 3442– 3444.
8. P. M. E. Gramlich, C. T. Wirges, A. Manetto and T. Carell, Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 8350-8358.


オリゴヌクレオチドのシングルラベリング及びマルチラベリング

ピリミジンの5位および、7-デアザプリンヌクレオシドの7位は機能を導入するには理想的な位置であり、立体障害を与えることないDNAの主溝に存在する部位です。アルキン修飾されたオリゴヌクレオチドのクリック反応ラベリングを効率的にするため、baseclick社では、5-(octa-1, 7-diynyl)またはエチニル側鎖を付加しています。下図のヌクレオシド1~4のホスホロアミダイトは優れた結合効率を有する固相合成法によりDNAオリゴマーに組み込まれます。オクタジニル側鎖のもう1つの特徴は、DNA2重螺旋の安定化効果です。(例:ヌクレオシド1であればTm値は1~2℃増加します。)
シングルラベリングにおいて、単一アルキン残基を有する精製されたオリゴヌクレオチドは通常対応するマーカーアジド(蛍光色素アジドなど)の2~5種の同等物で修飾されています。銅(Ⅰ)錯体添加後、30分~4時間の間でオリゴヌクレオチドの標識を完全に行うことができます。単純な沈殿工程後、ラベルされたオリゴヌクレオチドはほぼ定量的な収率で回収することができます。
マルチラベリングにおいて、クリック反応は同様にアルキン修飾されたDNAの複数の合成後のラベリングを可能にします。いくつかのアルキン残基の高密度の官能化は副生成物を形成することなく達成することができます。
また、複数のラベルを利用したマルチラベリングも可能です。2つの標識を有するオリゴヌクレオチドを修飾するためには、保護基のついたヌクレオシドと末端アルキン化ヌクレオシドを標準的なホスホロアミダイトを用いてDNA鎖に組み込みます。最初のクリック反応で、保護基であるTIPSを保持した状態で単一修飾されたオリゴヌクレオチドを精製します。2段階目の反応でtetrabutylammonium fluoride(TBAF)を加え、DNA損傷を起こすことなく保護基であるTIPSを切断します。その後3段階目とした2度目のクリック反応を行います。これにより2重改変オリゴヌクレオチドを高収率(60%~90%)で回収できます。

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