製品・サービス情報
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質量分析サービス
メタプロテオミクス受託解析サービス |
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概要
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微生物群集は、生物地球化学循環の主要な原動力として、地球の生物圏において重要な役割を果たしており、微生物に関する研究は絶え間なく行われてきました。しかし、その多様性と複雑性ゆえに、これらの複雑な微生物システムの機能を解明することは依然として困難な課題です。
近年、科学技術の進歩により、微生物を取り巻く情報が徐々に明らかになりつつあります。メタプロテオミクスは、微生物群集の時空間的特性を明らかにするための効果的な手法として注目されはじめています。質量分析技術を駆使したメタプロテオミクスは、微生物群集内のタンパク質の大規模な定性・定量的な解析を可能にします。このアプローチは、微生物の表現型に関する分子レベルの情報を明らかにし、「微生物生体系において個々の生物が何をしているのか」という疑問に答えます。また、代謝産物の含有量の変動に関連する特定の微生物構成要素を特定することで、微生物群集の機能に関する独自の知見をもたらします。

参考文献:
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解析のワークフロー
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メタプロテオミクスは、その環境の複雑さや多様な干渉、外部環境要因や空間変動の影響を受けやすいといった課題に直面しています。これらの要因は、タンパク質抽出を困難にし、データ解析にも課題をもたらします。さらに、サンプルには他の動物や植物由来のタンパク質を含む多様な種が存在する可能性があり、データ解析をさらに複雑化させます。
本サービスは、メタタンパク質研究における課題に対処するため、改良を重ね、10,000 種以上のタンパク質の同定を実現しています。また、質量分析に基づくメタプロテオミクスでは、アセチル化やジヒドロキシイソブチリル化など、10
種類以上の翻訳関連修飾の分析にも対応できる様になってきました。このアプローチにより、微生物群集におけるタンパク質翻訳修飾の全体像をより詳細に解析することが可能になり、「微生物叢-宿主-環境」間の複雑な相互作用を解明するための将来を見据えた視点を提供することが可能です。

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ケーススタディー
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事例1:炎症性腸疾患における腸内細菌叢の制御機構の解明
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クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、臨床的、免疫学的、分子生物学的、遺伝学的、そして微生物学的因子の影響を受ける慢性かつ複雑な疾患です。これらの疾患の病因と病態は未だ完全には解明されていません。腸内細菌叢は、長年、炎症性腸疾患の病態と密接に関連していると考えられており、一部の研究では、腸内細菌叢移植がこれらの疾患の治療における新たな介入となり得る可能性が示唆されています。
本研究では、メタプロテオミクス解析を用いて、クローン病患者の腸内細菌叢の詳細な解析を行い、病態下におけるアセチル化修飾プロファイルの変化が明らかになりました。調査の結果、アセチル化修飾はヒト腸内細菌叢の重要な代謝経路、特に
Firmicutes 門における短鎖脂肪酸の産生に広く関与していることが明らかになりました。本研究は、機能性微生物群集の研究において、アセチル化などの翻訳後修飾(PTM)の重要性を強調しています。

参考文献:
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事例2:環境微生物学と生態学的適応
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翻訳後修飾はタンパク質官能基内に豊富に存在し、深海熱水噴出孔環境における細菌の適応に重要です。タンパク質の翻訳後修飾(PTM)は、異なる微生物分類群の相同タンパク質間で差異を示し、微生物の分類と機能カテゴリーにわたって不均一に分布しています。
本研究は、メタゲノミクスとメタプロテオミクスを統合したマルチオミクスアプローチを用いて、熱水噴出孔生態系の微生物群集におけるアセチル化、脱アミノ化、水酸化、メチル化、ニトロシル化、リン酸化などの
PTM を包括的に調査しました。本研究では、微生物の分類と機能分類の両面において、様々な修飾タイプが不均一に分布していることが明らかになり、特定の修飾と異なる機能性との関連が示唆されました。これは、深海微生物における
PTM の高い多様性と独自性を浮き彫りにし、熱水噴出孔の極限環境への適応において PTM が重要な役割を果たしていることを示しています。深海微生物の
PTM 全体像の探索にメタプロテオミクスを利用することは、細菌が環境に適応する仕組みを理解するための有意義な研究手段となるでしょう。

参考文献:
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サンプル条件
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本サービスは、どの様なサンプル環境であるか、微生物以外の生物種などが含まれているか、どの様なカテゴリのタンパク質を解析するかなど、研究背景や解析目的などで、前処理条件などが変わるため、プロジェクトごとに必要量なども変わります。以下に示す量はあくまで目安となりますので、詳細につきましては弊社までお問合せください。
<サンプル準備のポイント>
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微生物群集は構成が複雑で、多数の不純物が含まれている場合が多いため、タンパク質抽出には目的に合わせた最適化が必要です。 |
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同じサンプル内の微生物群集は多様な特性を示すため、異なる抽出および溶解プロトコル(グラム陰性細菌/陽性細菌)が必要です。 |
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保管中は、外因性の動物、植物、ヒトのタンパク質による汚染、および他の発生源からの微生物汚染に注意する必要があります。 |
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複雑なサンプルからタンパク質を抽出することは困難であり、その様なサンプルでは、タンパク質の大幅な損失や抽出が失敗するリスクが高くなります。 |
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タンパク質の存在範囲が広いため、高度で効果的な一連の分離および分析実験戦略が必要となります。解析にはサンプリングされた状況、環境など、より詳細な情報が必要となります。 |
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通常は統計的優位性を保つため、最低3以上の生物学的レプリケートが必要となります。将来的なデータ公開までを想定する場合は、n=6~8 の反復数が推奨されます。 |
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解析サンプルについては、試験バッチを分割して実施することは推奨されません。機器の安定性や実験者のばらつき、質量分析計のメンテナンスおよび洗浄などにより、バッチエフェクトが生じる可能性があります。バッチエフェクトを排除することは困難であり、場合によってはバッチ間の差異がサンプル間の差異よりも顕著になることがあります。 |
<解析上のポイント>
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メタプロテオミクスは、環境由来の微生物群集およびマイクロバイオームに含まれるタンパク質を包括的に研究する分野です。本サービスにより、複雑な微生物群集に含まれるタンパク質を包括的に同定し、定量化することができますが、各試験に合わせてカスタマイズされた微生物群集のタンパク質データベース(ご提出頂く解析サンプルに対応したメタゲノムデータ)が必要となります。ご提出サンプルと合わせてご準備ください。
適切なデータベースを提供できない場合は、まず上流のメタゲノムシークエンスを実行して、プロテオミクスデータ解析に適したデータベースを構築することも可能です(別途有償)。この場合は、基本的に
1 サンプルのデータサイズは 6GB 取得いたします。本サービスでは、メタゲノミクスデータサイズが 6GB の場合、5,000~10,000種のタンパク質を検出することが可能です。 |
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価格
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メタプロテオミクスは通常、環境由来の微生物群集やマイクロバイオーム中のタンパク質を解析するために使用されます。宿主タンパク質の分析には対応できません。この他、解析に関する詳細などは、弊社までお問合せください。
サービス名 |
数量 |
税別価格 |
Cat.# |
メタプロテオミクス受託解析サービス |
1サンプル※ |
お問合せ |
F-CPM-MEP |
※ |
通常は統計的優位性を保つため、最低 3 以上の生物学的レプリケートが必要となります。将来的なデータ公開までを想定する場合は、n=6~8 の反復数が推奨されます。 |
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本サービスは、海外業務提携先で実施する解析のため、上記の解析料金の他、サンプルの海外輸送費が別途発生します。 |
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ご注意事項(必ずご確認ください)
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1. 解析サービスに関して
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本サービスの解析は、弊社の海外提携先(Creative Proteomics社)にて実施されます。 |
2. サンプルの送付および取り扱いに関して
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2.1 |
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サンプルの発送は、必ず、「サンプル送付方法およびご注意点(PDF)」をご参照の上、その内容に従って行って下さい。送付の際は、チューブをパラフィルムで覆い、キャップの緩みや中身の漏れが起きない様にしてください。サンプルの入ったチューブには、油性マジックでサンプル名を明記し、ビニールバッグ等に入れてください。十分量の砕いたドライアイスとともに梱包してください。 |
2.2 |
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サンプルは、なるべく休日を挟まない様に、弊社営業時間内(土日祝日、年末年始等を除く、平日9時~18時)に到着する様にご発送ください。なお、ご発送時の送料は、お客様負担となります。着払いではお受け取りできませんので、あらかじめご注意ください。 |
2.3 |
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サンプル送付の際は、受託解析サービスQCシート及び免責事項同意書を同封してください。これらが同封されていない、または記入漏れがある場合、解析サービスに着手できませんので、ご注意ください。 |
2.4 |
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解析元による抽出作業の結果、解析に必要な量が確保できなかった場合、サンプルの再送をお願いする場合があります。なお、再度サンプルをお送り頂く場合、提携先への再送料金をご負担頂きます。 |
2.5 |
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オプションのタンパク質抽出をご依頼頂いた場合、ご送付頂く組織・細胞などは、できるだけ新鮮なものをご用意ください。本抽出サービスでは、解析に必要な量の確保を保証するものではありません。解析に必要な量が確保できない場合、サンプルの再送をお願いする場合がございます。再調整が困難な貴重なサンプルの場合などは、ご注意ください。 |
2.6 |
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タンパク質の場合は、凍結状態にして、組織・細胞などの場合はペレット状態にして、十分量のドライアイスを同梱の上、冷凍宅急便にて、凍結状態にてご送付ください。 |
2.7 |
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サンプル喪失等に対する補償・保険制度はありませんので、貴重なサンプルをご提供頂く際はご注意ください。 |
2.8 |
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お預かりできるサンプルは、BSL2(バイオセーフティレベル2)までのものに限られます。感染性が著しく高いサンプル(HIV、HCV、HBVウイルスに感染していることが確認されている患者由来の検体など)は、お預かりできませんので、予めご了承ください。ヒト臨床サンプルの場合、インフォームドコンセントを得てからご提供ください。また、動物検疫・国際条約等に該当するサンプルの場合、輸送手続きに日数を要する、又はお取り扱いできないことがあります。こうしたサンプルは、弊社提携先にて受け入れが不能、又は拒否されたりする場合があります。 |
2.9 |
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ご提供頂いたサンプルの返却は致しておりません。(サンプルは解析終了時に破棄されます。) |
2.10 |
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本確認事項を満たさない事で別途費用が発生した場合、お客様に費用のご負担をお願いすることがあります。 |
2.11 |
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サンプル・業務等から生じた知的財産権・工業所有権・安全性・インフォームドコンセント等の問題について、弊社は一切の責任を負わないものとします。 |
◆サンプル、QCシートおよび免責事項同意書のご送付先
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フィルジェン株式会社 受託解析部 宛
〒459-8011 名古屋市緑区定納山一丁目1409番地
Phone:052-624-4388 Fax:052-624-4389 |
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3. キャンセルに関して
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本サービスは、海外提携先(Creative Proteomics社)での解析という性質上、サンプル受領後のキャンセルはお引き受けできません。やむを得ない理由でキャンセルされる場合、それまでの工程に応じた料金をご請求させて頂きます。 |
4. 納品物に関して
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納品物は、代理店経由でのお取引の場合、基本的に代理店を介してお送りします。納品データのバックアップは、必ずお客様にてお取りください。弊社でのデータ保管期間は、発送日から
90 日間です。弊社での保管期間を経過したデータは破棄されます。 |
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本ページは、Creative Proteomics社のホームページに掲載されている情報を引用させて頂いております。
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