製品・サービス情報
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質量分析サービス
iTRAQ®/TMT プロテオーム解析サービス |
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プロテオミクス研究には、タンパク質の同定と特性評価を行い、その機能や他のタンパク質との相互作用を解明することが含まれます。タンパク質混合物の組成は細胞の種類と異なり、特定の生理学的条件下でも変化する可能性があるため、個々のタンパク質の発現増減を定量化することが目標の一つとなることがよくあります。本サービスは、安定同位体標識試薬である
TMT 試薬または、iTRAQ® 試薬を利用して、タンパク質のノンターゲットなショットガンプロテオミクスを実施いたします。
※TMTTM (Tandem Mass Tag) は、Thermo Fisher Scientific 社の製品、iTRAQ® (Isobaric Tag for Relative and Absolute Quantitation) は SCIEX 社の製品です。 |
iTRAQ® および TMTTM テクノロジー
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【TMT テクノロジー】
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TMT 法は、等質量(アイソバリック)同位体標識タンパク質定量法で、定量法の中でも最も広く採用されている手法の一つです。セット内のマスタグ標識は、アミン反応性
NHS エステル基(アミン反応性基)、スペーサーアーム(バランス基)、およびマスレポーター基で構成されています。同位体の原理に基づき、異なる起源のペプチドは、特に
pH8.5 の条件下で、ペプチドの N 末端またはリジン残基に異なる同位体標識を結合させることで標識されます。特定の組み合わせキットでは、3つのグループが、異なる場所にある
13C および 15N 同位体の異なる数と組み合わせを通じて一定の総分子量を確保し、レポーターで 6mDa のモノアイソトピック質量差をもたらします。これらの差は高解像度質量分析法を使用して正確に定量化できるため、ペプチドセグメントをラベリング後、各サンプルに由来するペプチドソースの差別化を可能にします。試薬は最大
18plex の異なるサンプル/処理から得られたペプチドを標識することが可能です。 |
【iTRAQ テクノロジー】
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iTRAQ 法は、アイソバリックタグを用いてペプチドおよびタンパク質の第一級アミンを標識します。iTRAQ 試薬は通常、N-メチルピペラジンレポーター基、バランス基、およびペプチドの第一級アミンと反応する
N-ヒドロキシクシンイミドエステル基で構成されています。各 iTRAQ 試薬に含まれるバランス基は、各サンプルの標識ペプチドを同重体にする役割を果たし、質量分析計での断片化により生成されるレポーター基の分析を通じて定量化が容易になります。試薬は最大
8plex の異なるサンプル/処理から得られた全てのペプチドを標識することが可能です。これらのサンプルはその後プールされ、通常 LC-MS/MS
によって分析が行われます。
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【TMT と iTRAQ の違い】
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タグ付け |
iTRAQ は最大 8plex、TMT は最大 18plex の異なるサンプルを混合して一度の分析で定量化することが可能です。 |
再現性の向上 |
TMT と iTRAQ は、いずれも分析前に異なるラベルを混合することにより、再現性が向上し、技術的なエラーが最小限に抑えられ、検出効率が向上します。 |
標識効率 |
TMT と iTRAQ は、どちらもサンプル内のほぼすべてのタンパク質を標識できるため、包括的なタンパク質カバレッジが保証されます。 |
レポーターイオン強度 |
iTRAQ では、レポーターイオンは強度比に基づいて定量化されますが、TMT では、レポーターイオンの相対的なピーク面積を使用して定量化されます。 |
レポーター基の分子量 |
iTRAQ は 113-121(標識試薬間の最小分子量差は 1Da)、TMT は 126-135(標識試薬間の最小分子量差は 6/1000Da)で構成されています。 |
質量分析との互換性 |
TMT および iTRAQ は、いずれも Orbitrap やトリプル四重極システムを含む様々な質量分析装置で使用されています。ただし、TMT
のラベル識別には質量分析計の分解能が 50,000 以上である必要があります。 |
コストパフォーマンス |
iTRAQ は 最大 8 サンプルまでのプールのため、サンプルの分析規模が少ない場合にコスト効率が高くなりますが、TMT 試薬は、18 サンプルまでプールして一度に解析ができるため、規模の大きい研究に利用できます。 |
下流のデータ解析との互換性 |
TMT および iTRAQ には、それぞれの定量化データを処理できる専用のデータ解析パイプラインとソフトウェアが備わっています。手法を選択する際には、下流のツールとの互換性を考慮する必要があります。 |
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網羅的なタンパク質同定と発現相対定量のワークフロー
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1. |
各サンプルからのタンパク質抽出 |
2. |
サンプルの酵素消化 |
3. |
iTRAQ または TMT 試薬でラベリング |
4. |
すべてのサンプルを等量で混合 |
5. |
サンプルを複数セクションに分画 |
6. |
高性能 nanoLC-MS/MS 解析 |
7. |
データベース検索によるタンパク質の同定および相対定量数値化 |
8. |
バイオインフォマティクス解析(別途オプション) |
【使用機種】
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nLC 1000 system
(Thermo Fisher Scientific) |
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Q ExactiveTM MS/MS System
(Thermo Fisher Scientific) |
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網羅的なリン酸化部位同定と比較定量解析
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本サービスは、TMT または iTRAQ 試薬を用いることで、生体サンプル中の網羅的なリン酸化部位同定と比較定量解析にも対応することができます。生体内で合成されたタンパク質は、翻訳語修飾(PTM)を受け、その過程でリン酸基や糖鎖の付加などが起こります。多くのタンパク質は、これらの修飾基の付加により、その機能を獲得すると考えられており、タンパク質機能を解明する上での手掛かりをつかむためには、PTM
の解析は不可欠です。本サービスでは、この PTM の解析として、リン酸基で修飾されたタンパク質の修飾部位を決定できます。また、リン酸化ペプチドの相対定量も行います。
タンパク質の PTM は、その存在量が少ないため、大規模なリン酸化タンパク質プロファイリングを行うためには、リン酸化ペプチドのエンリッチメントが必要です。本解析では、IMAC
によるリン酸化ペプチド濃縮をベースに、より多くのリン酸化プロテオーム情報を得るために、セリン、スレオニン、およびチロシンの 3 種のリン酸化タンパク質を濃縮する独自のアプローチを取り入れています。リン酸化ペプチドを濃縮後、LC-MS/MS
の測定前にサンプルを複数セクションに分画します。これにより、より多くのリン酸化部位が検出されます。 |
必要サンプル条件
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サンプルからのタンパク質抽出作業からご対応いたします。ただし、生物種あるいはサンプルタイプによってはタンパク質精製・抽出に、追加費用が発生する場合があります。
なお、以下の必要量はあくまで目安となります。生物種や症例、培養条件などで必要量が変わる可能性があります。
サンプルタイプ |
必要量 |
組織 |
100~200mg |
細胞 |
>1x107 個 |
血漿・血清 |
100~200μL |
バクテリア |
>1x107 個(細胞ペレット>100μL) |
精製タンパク質 |
総タンパク質量>300μg(>1μg/μL)
【抽出/溶解バッファー】
推奨:8M Urea Buffer(尿素を ddH2O で溶解して BM に調製してください。pH 調製の必要が無い様に新鮮なバッファー(使用前に調製)をご使用ください。また、プロテアーゼおよびホスフォターゼ阻害剤なども追加することを推奨いたします。)
利用可:RIPA Buffer
※その他のバッファー使用してタンパク質抽出を実施する場合はご注意ください。 |
※ |
リン酸化部位同定・比較定量解析の場合、解析に必要なサンプル量は上記の量の 2~5 倍量必要となります。解析内容や分析サンプルの諸条件によって、必要総タンパク質量が変動いたします。詳しくは弊社までお問合せください。 |
※ |
タンパク質抽出の際に使用するチューブによっては、PP または PE など、チューブ材質由来のピークが検出され、ペプチドのイオン化を阻害し、データ解析に重大な影響を及ぼす可能性がありますので、ご注意ください。また、過剰にボルテックスなどをかけない様にご注意ください。 |
※ |
タンパク質に、界面活性剤など(ポリマー)が多量に残留していると、ポリマーがサンプル由来のペプチドのイオン化を阻害し、データ解析に重大な影響を及ぼす可能性がありますので、ご注意ください。 |
※ |
動物検疫・国際条約等に該当するサンプルのばあい、輸送手続きに日数を要する、又はお取り扱いできないことがあります。こうしたサンプルは、弊社提携先にて受入れが不能または拒否されたりする場合もございますので、事前にお問合せください。 |
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参考文献
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Quantitative Proteomics and Molecular
Mechanisms of Non-Hodgkin Lymphoma Mice Treated with Incomptine A, Part II (Pharmaceuticals
2025, 18(2), 242) |
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Proteome remodeling in the
zoospore-to-vegetative cell transition of the stramenopile Aurantiochytrium
limacinum reveals candidate ectoplasmic network proteins (PLOS One, July 2,
2025) |
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Proteomics Applications in Toxoplasma
gondii: Unveiling the Host–Parasite Interactions and Therapeutic Target
Discovery (Pathogens 2024, 13(1), 33) |
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Control of ribosomal protein synthesis
by the Microprocessor complex (Science Signaling, 23 Feb 2021, Vol 14, Issue
671) |
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価格
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サービス名 |
アプリケーション |
税別価格
1サンプル |
カタログ# |
iTRAQ プロテオーム解析サービス |
タンパク質同定・発現相対定量解析 |
¥229,000 |
F-CPM-iTRAQ-[サンプル数] |
リン酸化部位同定・比較定量解析 |
¥320,000 |
F-CPM-iTRAQP-[サンプル数] |
TMT プロテオーム解析サービス |
タンパク質同定・発現相対定量解析 |
¥229,000 |
F-CPM-TMT-[サンプル数] |
リン酸化部位同定・比較定量解析 |
¥320,000 |
F-CPM-TMTP-[サンプル数] |
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表示価格は、1 サンプルの金額です。本サービスは比較解析のため、2 サンプル以上からの受注受付となりますので、ご注意ください。 |
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本サービスは、海外業務提携先で実施するため、上記の解析料金の他、サンプルの海外輸送費が別途発生します。 |
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ご注意事項(必ずご確認ください)
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1.解析サービスに関して
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本サービスの解析は、弊社の海外提携先(Creative Proteomics社)にて実施されます。 |
2.サンプルの送付および取り扱いに関して
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2.1 |
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サンプルのご発送は、必ず、サンプル送付方法およびご注意点の内容に従ってください。送付の際は、チューブをパラフィルムで覆い、キャップの緩みや中身の漏れが起きない様にしてください。サンプルの入ったチューブには、油性マジックでサンプル名を明記し、ビニールバック等に入れてください。十分量の砕いたドライアイスとともに梱包してください。 |
2.2 |
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サンプルは、なるべく休日を挟まない様に、弊社営業時間内(土日祝日、年末年始等を除く、平日9時~18時)に到着する様にご発送ください。なお、ご発送時の送料は、お客様負担となります。着払いではお受け取りできませんので、あらかじめご注意ください。 |
2.3 |
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サンプル送付の際は、受託解析サービスQCシート及び免責事項同意書を同封してください。これらが同封されていない、または記入漏れがある場合、解析サービスに着手できませんので、ご注意ください。 |
2.4 |
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組織・細胞の場合はペレット状態にして、タンパク質の場合は凍結状態にして、十分量のドライアイスを同梱の上、冷凍宅急便にて、凍結状態にてご送付ください。 |
2.5 |
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解析元による抽出作業の結果、解析に必要な量が確保できないかった場合、サンプルの再送をお願いする場合があります。なお、再度サンプルをお送り頂く場合、提携先への再送料金をご負担頂きます。 |
2.6 |
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オプションのタンパク質抽出をご依頼頂いた場合、ご送付頂く組織・細胞は、できるだけ新鮮なものをご用意ください。本抽出サービスでは、解析に必要な量の確保を保証するものではありません。解析に必要な量が確保できない場合、サンプルの再送をお願いする場合がございます。再調整が困難な貴重なサンプルの場合などは、ご注意ください。 |
2.7 |
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サンプル喪失等に対する補償・保険制度はありませんので、貴重なサンプルをご提供頂く際はご注意ください。 |
2.8 |
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お預かりできるサンプルは、BSL2(バイオセーフティーレベル2)までのものに限られます。感染性が著しく高いサンプル(HIV、HCV、HBVウイルス)に感染していることが確認されている患者由来の検体など)は、お預かりできませんので、予めご了承ください。ヒト臨床サンプルの場合、インフォームドコンセントを得てからご提供ください。また、動物検疫・国際条約等に該当するサンプルの場合、輸送手続きに日数を要する、又はお取り扱いできないことがあります。こうしたサンプルは、弊社提携先にて受け入れが不能、又は拒否されたりする場合があります。 |
2.9 |
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ご提供頂いたサンプルの返却は致しておりません。(サンプルは解析終了時に破棄されます。) |
2.10 |
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本確認事項を満たさない事で別途費用が発生した場合、お客様に費用のご負担をお願いすることがあります。 |
2.11 |
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サンプル・業務等から生じた知的財産権・工業所有権・安全性・インフォームドコンセント等の問題について、弊社は一切の責任を負わないものとします。 |
(サンプル、QCシートおよび免責事項同意書のご送付先)
フィルジェン株式会社 受託解析部 宛
〒459-8011 名古屋市緑区定納山一丁目1409番地
Tel: 052-624-4388 Fax: 052-624-4389 |
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3.キャンセルに関して
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本サービスは、海外提携先(Creative Proteomics社)での解析という性質上、サンプル受領後のキャンセルはお引き受け出来ません。やむを得ない理由でキャンセルされる場合、それまでの工程に応じた料金をご請求させて頂きます。 |
4.納品物に関して
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納品物は、代理店経由でのお取引の場合、基本的に代理店を介してお送りします。納品データのバックアップは、必ずお客様にてお取りください。弊社でのデータ保管期間は、発送日から3か月間です。弊社での保管期間を経過したデータは破棄されます。 |
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